春畑セロリのワガママ部屋

対極の2公演

3月の第1週は、「セロカワゆカリ ひゃくいろかがみ」の旗揚げ公演。下北沢のHalf Moon Hallという不思議な空間で、究極に研ぎ澄まされ、何もかも削ぎ落とされた鋭い時間を構築しようと試みました。一人芝居とソロピアノ。言葉と音。語りとハーモニー。そのアンサンブル、響き合いの試みは、あるときは見つめ合い、あるときは寄り添い、あるときは闘い、幾度も厳しい瞬間を産みました。まだまだ理想とする到達点へは程遠いものがありますが、何はともあれ、多方面の方々から高評価をいただき、胸をなで下ろしています。
2時間近くにわたってステージでただピアノを弾く、、というのは、書き屋の私にとって本当に珍しいことなのだけど、今回、ピアニストとしてはある意味脇役、でも作曲家としては主役という、奇妙な体験となりました。
自分の「ぶらぶ~らの地図」というピアノ曲集の一篇一篇に、作家から新しい物語が捧げられ、それを女優が丹念に演じる……。そのことも新しい体験だったけれど、自作にこうも真っ直ぐ向き合ってピアノを弾くというのも、新鮮だったわけです。それは驚きでもあり、尽きせぬ悔恨の時でもあり、また、沸々とした勇気をもらう瞬間でもあったのでした。
作家・ナカガワマサヒロ(A.S.)と、女優・石野由香里。この二人に出会わなければ、この貴重な時間は得られなかったでありましょう。

そして3月第2週は、横浜港南区民センター「ひまわりの郷」で、2作目の書き下ろしファミリー・ミュージカル「もうひとつの浦島太郎」を初演。前週の究極に削ぎ落とされたステージとは真逆の、何もかも満載、歌あり、ダンスあり、きらびやかな衣装・照明・装置あり、プロアマ混在、大人こども混在、ホールと市民が力を合わせて作るステージ。この落差がすごかったなぁ~。
計22曲、書きまくりましたけど、それはそれで、好きな曲も幾つもあって、歌い手さんも素敵に歌ってくれて、楽団も頑張ってくれて、何か本当にほっこりした時間を過ごしました。

どちらも音楽。どちらも演者とともにあり、どちらも聴衆とともにあり、このひととき、私が紡ぎ出したものを演じ、聴いてくださる。なんという贅沢な時間であろうか。