春畑セロリのワガママ部屋

人とともにあるということ

東京農大の進化生物学研究所にお邪魔しました。生き物のことで、新しいプロジェクトが始まるからです。

キツネザルに葉っぱをあげながら、「つながる」ということ、「ともに歩く」ということを考えてました。

 

折しも、13年前にリリースした「みんなのピアノワールド」の連弾曲がセレクトされて1冊に凝縮され、「連弾セレクション」としてリニューアルしたところでした。

思えばこの原型は、原川健、秋透、布施威、春畑セロリの4人で、選曲から編曲まで完全共著、丁々発止、議論を重ね、推敲を重ねて出版した曲集でした。ふだんは個人プレーで、一緒に仕事することのない作編曲家たち(まぁ、と言いつつも、しょっちゅう遊びに行ったり飲みに行ったり、仲のよいメンツだったのですが)が、足並みそろえてひとつのものを作るというのは、なかなか貴重な体験でした。今回、久しぶりの改訂版を祝して飲み会のひとつもしたいところでしたが、このご時世ではそれも叶わず、そーっと出版。13年前に、1つの音符、1つの休符にこだわって議論を交わした日々を懐かしく思い出します。

 

縁とは不思議なもので、そんな今年に、まったく新しいご縁の共著がリリースしました。共著といっても、オムニバス曲集じゃありません。作曲家3人(樹原涼子、轟千尋、春畑セロリ)が、打ち合わせナシでお話と音楽を書いてリレーしていき、最終的にひとつの物語、ひとつのピアノ曲集としてまとめあげるというドキドキの展開。

この「ある日、オリーブの丘で 〜お話と音楽のバトン〜」は、先の「みんなのピアノワールド」とはまったく違う手法で、3人が個性と想像力と音楽性をぶつけあった曲集です。これはもう、女子会のようなノリだね。ワイワイ楽しく仕上がりました。雑誌取材やイベントも、ほぼワイワイ状態だ!

 

そんな珍しい同業者コラボの話題が続いた今年でしたが、今度は、畑違いの専門家とガッツリ足並みをそろえてひとつの作品を作っていくというプロジェクトが、すでに次々とスタートを切っていて、さらに楽しみ満載の状況です。

一つ目は、「できるかなひけるかな」シリーズその他、何度もチーム制作をさせてもらっている、イラストレーターささきちみさん、デザイナー佐藤朝洋さんとのコラボ。

普通は曲や原稿が書き上がってから、イラストを発注してレイアウト、っていうことになるんだけど、彼らとは、発想の根源から一緒に歩いてもらっています。今回は、なかなかハードル高く難儀な作業に突入してますが、きっとアホで楽しいものができるでしょう! 乞うご期待。

 

そして、二つ目は、進化生物学研究所の蝦名元先生と、子ども造形教室Qinari研究所の秋田彩子先生とのコラボ。

理科と美術と音楽のワークショップを3人で一緒に展開しつつ、子どもたちのアイデアをもらいながら、やがて1冊のピアノ曲集に仕上げていくという、誠に先行き不透明な企画です。実際、どうなっちゃうかわからないプロジェクトなんだけど、秋田さんは、大学の後輩でありながら、小学校の後輩でもあるというご縁。蝦名さんは、父と名字の読みが一緒であるのみならず、ルーツが同郷というご縁。絶対面白い展開になるよね。

東京農大で出会ったワオキツネザルには、ピアノ曲「グレイブラウンネズミキツネザル」を捧げたいところです。

 

そしてもう一つ。小学校音楽教育に一石を投じたい(大げさ)という新プロジェクト。

小学校の現場で活躍中の吉村美保さん(ミホ先生)と岩井智宏さん(トモ先生)と一緒に繰り広げていこうというこの企画は、来月、本格的にキックオフ。みんな干支が一緒という(同い年ではないぞ)、密なご縁です。

 

こんなふうにチームで開発していくプロジェクトが並列して進行していくのは、ふだん地下でひとりで無駄飯を食っている作曲家としては、ちょっとワクワクが止まりません。まだどうなるか見えないところもワクワクの要因です。

そうそう、ワクワクといえば、10月は、珍しく病院と仲良くしてました。ここ3年ほど、父や母の病院通いが続いた日々だったけど、自分がお世話になるとは…。とても小さくて何の心配もない治療だったけど、珍しい経験って心に染みます。一応、キーワードだけ、自分用にメモっておこう。「想い出の局麻 〜ボクシングだけはやめて〜」……お〜いっ、演歌のタイトルかっ!

そんな通院に時間をとられて、母の差し入れにもあまり行けなかった日々。「なかなか行けなくてゴメンね」と電話しながら、「今日、ドクターにこう訊いたら、先生はこんなこと言ってくれた」などと、小学生のように他愛もない報告ができるのが、なんだかちょっぴり嬉しかった。いちばん心に響いたのは、母が電話の切り際に言ってくれたこと。「会えなくても、お互いにそれぞれの場所で、頑張ろうね。楽しもうね」……と。