春畑セロリのワガママ部屋

郷土愛プロジェクト〜阿寒湖〜奄美

12月第1週の週末、北海道・阿寒湖畔に立つ! 阿寒にはアイヌのコタンがあります。その一画を訪ね、岩手から婿入りしたという青年に、アイヌの音楽のことを熱く語ってもらいました。厳格な流儀を踏襲しながら今も伝えられていく歌とムックリの調べ。それは観光化された部分を持ちながらも、やはり古いスピリッツを伝える貴重な文化であり、人々はそれを愛し続けているのです……。
伝統を伝えることと、今生きた音楽をすること、大切なものを守ることと、オープンにしていくこと。そのせめぎあいやジレンマと闘いながら、やはり歌は残っていくのでしょうか。年を重ねた人々と、ロックやレゲエと親しみながらもルーツ文化の担い手として名乗りをあげる若者たちとの想いは、どう交差するのでしょうか。
雪の上に輝くかがり火の中に照らされた、美しい衣装と伝統の踊りを見ながら、日本の郷土の音楽の膨大な財産、その量、複雑さ、強さ、素朴さ、悲哀、慟哭、艶笑、粋、泥臭さ、そしてその測り知れなさ(この間、芸大の図書館で、即、討ち死にしたっけ)に、冷たいひざと一緒に、漠とした恐怖感まで抱いて凍えていた私なのでした。

一週間後、12月第2週の週末、奄美の美しい浜辺にいました。ここで夜明けとともに、人々が神をつかまえるお祭りをするという。大胆で明るいその発想。にぎやかな南の島の祭り、そしてまた自由で奔放でありながら、物哀しくしみじみと心に訴えかける奄美のシマウタ。
島の人々の唄への想いをたくさん聞き、そして唄もたくさんたくさん唄ってもらい、味噌のお茶請けをいただき、笑いあい、おしゃべりしあい、こどもたちの唄声を聴き、三味線を教えてもらい、島本来の唄遊びのさまも伝えきき、太鼓を叩き、踊りの真似事をし、青い海と暁の海を目に焼き付けて帰ってきました。
ここにも、島の唄を伝え続ける人々がおり、また自分らの音楽を探し続ける若者たちがいるのでした。それはやむにやまれぬ自らのルーツへの探求なのだろうか。

盛りだくさんで幸運で、しかし畏れ多くて背筋の凍る、しかしまた楽しく嬉しく愛にあふれた、セロリの郷土音楽プロジェクトが、いよいよ今月スタートしたのでありました。来年は、この郷土取材でワクワクの日々が過ぎ、私の机は、CDや取材MDや、紙や五線譜であふれかえり、アタマは混乱、心はボーゼン、さぞや周りの人々のヒンシュクをかうことでありましょう……!