春畑セロリのワガママ部屋

湖畔のホテルにて

秋のある日、なんか、どうにも地下にこもっていられなくなっちゃった私は、えーいっと仕事をなげうって、びゅーんと、湖畔のホテルに泊まりに行っちゃいました。ラウンジ・パスポート付きのロングステイ・プランで、翌日午後2時のチェックアウトまでのーんびり。何回もラウンジに通い詰めたもので、ウェイトレスさんにすっかり顔と名前を覚えてもらいました。
なんと、占いで「出会いは吉!」と出たもんで、よぉし、何かいい出会いがあるぞぉと思っていたら、ま、イケメンとは出会わなかったけど、おいしい空気と湖にきらめく夕陽のおかげで、何やらしっかりと、創作意欲と出会って帰ってきました~。

と、思っていたら、帰り道で、とても幼い頃に家族で泊まりに行った旅館の前を通ったんですよねぇ。あれはもう、何十年前のことだろう。鮮明な記憶はほとんどなく、後で見た写真のおかげで覚えているような気になっているのかもしれない。祖父も祖母もいて、両親と兄がいて、浴衣を着てふざけている自分がいて。あー、あのとき私は、あんなふうに家族の温もりの中いたんだなぁ。私が今ここにあるのも、面白おかしく仕事をして音楽と向き合っていられるのも、家族に愛されてすくすく育ったおかげなんだなぁ。という気持ちがこみあげてきて、思わず涙がこぼれそうになりました。おい、創作意欲に出会ったなんて、チャンチャラおかしいぜ。自分の力でここまで来れたと思うなよ。
私がこの日、本当に出会ったのは、遠い昔に自分を育ててくれた、自分自身の根っこなのでした。